今は無き最高上映品質の映画館・Q-AXシネマ(渋谷シアターTSUTAYA)その5 閉館していなかったらのもしもの話。

2016年08月15日 00:03

個人的に思いで深い映画館であったため、記事が非常に多くなってしまいましたが今回がラストとなります。日本最高の能力を持ちながら短い期間で幕を閉じたQ-AXシネマ・渋谷シアターTSUTAYA。知る人ぞ知る最高の映画館でした。最近のスターウォーズEP7や劇場版ガールズ&パンツァーでの音に対する関心が当時もあれば、映像の品質に対するこだわりが今でもあれば、閉館にはなっていなかったかもしれません。

最後の記事はQ-AXシネマ・渋谷シアターTSUTAYAが閉館せずに残っていたら、スターウォーズ、ガルパンの音響イベントに参加していたら、もし残っていた時自分が見たかった作品は何かについて。そして映画館に対する口コミや反応について書きたいと思います。

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○スターウォーズEP7

個人的にはもう一つ伸びて欲しかった作品。シネマシティでは爆音上映を行うもガルパンを前に敗北。イオンシネマ海老名がスターウォーズはTHXでこそと河東氏に調整を依頼した事で話題となりました。すぐ近くのTOHOシネマズ海老名にお客を引っ張られ閉館するのではないか?と危ぶまれていましたがスターウォーズEP7と共にまさにジェダイの帰還と言える復活を成しえました。

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THXを全面に打ち出したポスター。THXグッツのプレゼントも含め様々な客層を引き込もうという映画館側の努力が見えます。また当時は妖怪ウォッチが非常に人気であった為、多くの劇場がスターウォーズが2番手以降という形でした。その中でもメインのスクリーン7・THX認定劇場で上映を続けたイオンシネマ海老名には心からの拍手を送りたいです。

河東氏の調整によりシャープで迫力のある音になったスクリーン7.以前に記事に書いたようにこの劇場は特殊構造により通常の映画館では表現出来ないような空間表現が可能です。しかも574席という広大な空間であれだけの音場を作り出しているのですから驚きです。しかし空間が大きい程に弊害も出てきてしまいます。
Q-AXシネマは263席。約半分の座席しかありませんが200~300席程度の座席数の方が音のまとまりや繋がり、再生時の歪み等も少なく理想的ともいえるのです。海老名はそれを574席という空間であれだけの表現を生み出しているから凄いのですが実際のクオリティはどうかと言えばQ-AXのシアター1が圧勝と言えます。もちろん好みにもよります。海老名スクリーン7のような柔らかな風格ある音が好きだという人には海老名がいいと言えるでしょう。しかしながら海老名はやはりどうしても古さを感じさせるものがあります。鳴らしこまれたスピーカーだからこその表現もありますが高域、低域はどうしても伸び切らず苦しい所もあります。サラウンドの雄大さは海老名の凄さではありますがQ-AXでも同等かそれ以上の表現が可能であったと思います。
劇場構造においてQ-AXと海老名は似ているという事も書いたと思いますがQ-AXは1993年の革新的劇場構造を2000年代の技術で更に昇華させたものだったのです。更に言えば劇場内のノイズレベルや残響特性、スピーカーの再生特性においてもQ-AXは遥かに上でありTHXの製作者の意図を正確に伝えるという点においても上であったと言えます。本気を出した修業を終える前後のルークくらい差があったと思います。
Q-AXがなくなった今ではTHXの最高峰は間違いなく海老名スクリーン7であると言えるでしょう。


フォースに満ちた館内。
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また今でこそガルパンの効果で有名となったULTIRAですがULTIRA×DOLBY ATMOSのスターウォーズEP7を上映したイオンシネマ幕張新都心の客入りは非常に微妙な動員でした。


○劇場版ガールズ&パンツァー

シネマシティの極上爆音上映が爆発的ヒットとなり上映館が拡大。再上映となったり特殊調整をかけたりと話題になったガルパン。シネマシティでは6000万かけてラインアレイスピーカーを導入した事でも騒ぎになりました。イオンシネマ海老名ほかTHX劇場も上映、幕張新都心ではULTIRAが大反響となり一躍有名に。後に9.1ch上映を行うなど従来の映画にはない発展、ロングランヒットとなりました。


他に例を見ない形式となったガルパンの上映。

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音響的な関心を高めたこの作品をもしQ-AXが上映していたら。間違いなくシネマシティ、イオンシネマULTIRA、海老名THXと対等以上の人気を集める事になっていたと思います。音響に厳しいガルパンファンですが劇場構造により響きが強いシネマシティや海老名THX、空間の広さから高域のわずかな余韻に膨張感のあるULTIRAに対しキャラクターの声をシャープに、なおかつ鮮明に再生する事が出来ます。また強烈な低音が収録されているガルパンですが他の帯域を邪魔することなく再生出来るQ-AXのシアター1はまさに最適な劇場とも言えます。サラウンドにおいても飛び散る破片や後方からの砲撃など様々な面で特殊構造の強みを発揮すると言えます。6.1などにせずとも役人の声は真後ろから聞こえたかもしれません。
ガルパンでいえば島田愛里寿操るセンチュリオンのごとき強烈さである事は間違いなく単騎で各映画館を撃破してしまう程の強さがあります。
Q-AXシアター1の再生はシネマシティの爆音上映やULTIRA9.1などの特殊上映とは真逆のまさにアンチテーゼと言えるものと言えます。特殊なスピーカーは使用しないですし作品に合わせた特別な調整は行わない。(シアター1の劇場設計、施工だけで6000万い以上かかっているかと思います。)ただ完成された空間でありのままに再生するだけで至高という映画館です。特別調整ももちろん面白いものですし否定もしていませんが、製作者の意図を正確に再現することが映画館に求められている事です。後から調整して迫力を出すくらいなら最初からそういう音にすればいいのです。もちろん特別感を出すなどの意味では有効な手段ですが真っ当な映画館として頭ひとつ抜けた映画館が非常に少ないのも事実でしょう。(映画館の能力の平均値が高い事は否定しません)

ただQ-AXシネマ・渋谷シアターTSUTAYAはイベント上映にもフレキシブルに対応出来る映画館だったため、シアター1では最高のTHX劇場での上映を、シアター2では岩浪音響監督による調整上映を、また1日限定のガルパンカフェで関連する料理やキャラクターをイメージしたドリンクを提供などもしていたかもしれませんね。トークショーなどもしていたかもしれません。


○デジタルシネマの導入

渋谷シアターTSYTAYAとして運営していた際にもデジタルシネマの導入を検討していたらしいです。フィルム映写機2台の間に何とか入れたのかどうかは今となっては分かりませんが、フィルムからデジタルになったとしても高透過ガラスや反射の極めて少ない空間での映写は素晴らしいものになっていた事でしょう。そもそもあの映写さんがポン置きしたまま置いておくとも思えません。今回大きく話題となった劇場のほとんどがシルバースクリーンを用いたカーブドスクリーンです。シルバースクリーンは明るいですが色味がきつくギラツキやすい欠点があります。またカーブドスクリーンはその形状ゆえに映像は必ず歪んでしまいます。Q-AXシネマ・渋谷シアターTSUTAYAであれば極めて歪みが少なく、マットプラススクリーンによる鮮やかな色合いの映像が楽しめた事でしょう。フィルム映写機のレンズも相当高価なものを使用していたようなのでデジタルにしても同等以上のレンズを使うでしょうね。スクリーンのサイズはシネコンに比べると小さいですが、スターウォーズの宇宙にきらめく星の数が多く見えたり、ガルパンのみほの部屋の埃が鮮明に見えたりするでしょう。


○ゴマがQ-AXシネマ・渋谷シアターTSUTAYAで個人的に見たかった作品。

○ラッシュ・プライドと友情
実際にあった話で伝説のレーサー2人による戦いと友情を描く作品です。迫力の映像に見合う強力なサウンドはこの劇場にぴったりの作品と言えます。派手なレースシーンと対極のドラマパートでは静寂に満ちた場内がよりライバル同士の2人の感情を伝える事でしょう。

○ゼロ・グラビティ
DOLBY ATMOSでかなり衝撃を受けましたが音はもちろん、闇の深いこの劇場ならではの宇宙と場内を結ぶような映写が体験出来たと思います。静かな場内も宇宙の孤独をよりリアルに伝えるでしょう。

○フューリー
映像、音共にとんでもなくクオリティが高い作品。HE弾発射の衝撃は足元を震わせ、対戦車砲はRスピーカーからSrRスピーカーへ鋭く見えるかの様に飛んでいく・・・それを簡単に想像できてしまうほどの相性のよさだと思います。プライベート・ライアンと同じく渋谷がまた戦場になった事でしょう。

○風立ちぬ
モノラル音声の為どこの劇場でもセンタースピーカー以外の音は一切出ません。非常に重要なセンタースピーカーの素の音を聞くにはもってこいの作品だったと思います。

○ヱヴァンゲリヲン新劇場版シリーズ
サラウンドにこれでもかと言うほどに音を回しているヱヴァシリーズ。全体に広がる音やピンポイントに定位する音でもなんでも再現してしまうでしょう。リアルなアニメーション映像もスクリーンに映えたと思います。

○新海誠監督作品
映像の美しさで有名な新海誠監督。全ての作品が好きですがあの鮮やかな映像、影や暗闇の中の映像の情報の多さ。この劇場ならばきっとより現実以上の美しさだったでしょう。これに限ってはシアター2でゆったりみたいかもしれません。

○シン・ゴジラ
サラウンドスピーカーから音が出ない3.1ch収録で物議となった本作。けしてサラウンドが鳴らなくとも特殊構造と追い込まれた調整によるフロント表現は他では聞けない音になったと思います。

他にもたくさんの見たい作品がありますが最近ではこの辺りでしょうか。もちろんスターウォーズEP7やガルパンも見たいですね。見た人からは海老名に続く聖地になり、シネマシティと共に伝説になった事でしょう。



○SNS普及による情報量の増大
スマートフォンやノート、タブレットなど高度な情報機器を誰もが手軽に持ち運べる時代になりました。10年前にはここまで広がるとは思いもよらなかった事です。SNSも影響力が大きくなり一個人の感想が瞬く間に100人、1000人、10000人もの人に広がり共有されます。この情報伝達は映画館にとって非常にありがたいものと言えますが全てにおいていいと言えるものではないとも言えます。

良い点ではほとんど認知されていなかったULTIRAがガルパンにより多くの人に知られてその評価をようやく得られた事。新作映画の封切りにメイン館に数人しかいなかったイオンシネマ海老名がTHXの認知により見事に復活を遂げた事。極上爆音上映を見る為に北海道や沖縄、挙句国外から見に来る人までいた事。挑戦的な試みを行った映画館がその情報を拡散し、見た人がまたその感想を拡散することで多くの人が映画館の性能を知ることが出来ました。

ただ良かった半面悪い事もあるのです。上記の話題になった映画館にしろ感想は全てバラバラであり響きが多いと言う人もいれば余計な響きがないと言う人もいるのです。実際見る座席が変われば音も変わりますししばらく映画館で映画を見ていなかった人からすれば普通の映画館的な音でも低音がやばい!と言う人もいるわけです。自分の書いているブログも含め、情報に踊らされる事がないようにしたいですね。見かけた感想で気になったもので言えばイオンシネマ海老名の低音は床が震える程の低音がやばい!というコメントが多くありましたが現行のシネコンに比べればかなり抑えてある、というか設置台数が少ないのかもしれません。シネマシティのガルパン爆音上映も最高で文句がないという感想が多いですが所々破綻はありますし、あえて捨てているのは分かってもエンディングの低音過多はあまりにひどいです。もちろん個人の感想なのでそう感じる人もいますが各劇場の説明書きやウリをそのまま妄信している人も多いようです。

今回特にガルパンで思ったのは特殊上映を行った劇場以外の感想がほぼ聞こえてこない事です。話題性のある劇場の感想は多くて当然ですが新宿バルト9の完ぺきな映写や作品にマッチした迫力のサウンドの感想はほとんどありません。大阪ではTOHOシネマズなんばのTHAS劇場でも上映しましたがあれだけ強力な劇場でも音の感想は皆無でした。THXにしても海老名以外の感想はあまりありません。K.C.S.のスピーカーを使用したTHX認定劇場は正直イマイチな印象もありますがイオンシネマ福岡のTHXはスクリーンが大きく明るく伸びやかで低音も出る良い劇場でしたがその感想もありません。


一番の問題はクレームとも呼べない悪質な書き込みも稀にあるという事です。事実無根の書き込みでも場合によってはその映画館の運命を左右してしまうほどの影響力を自分たちは持ってしまっている事を認識しなければなりません。


と言ってもやはりSNSの宣伝効果は絶大であり多くの映画館がこれをうまく利用すれば多くの集客が見込めます。そうなれば設備改装やイベント上映など映画館側の出来る事も増えて行きます。Q-AXシネマ・渋谷シアターTSUTAYAも多くの人から認知され、日本で最高の映画館だという事が多くの人に広がっていればもしかしたら閉館を免れていたかもしれません。もしかしたらの話をしても閉館した事実は変わりませんし復元出来ない劇場だったのでまさに伝説の劇場となってしまいました。


以上がQ-AXシネマ・渋谷シアターTSUTAYAという最高・最強の能力をもった映画館についての個人的な文章になります。客観的に見ても音響、映写のずば抜けた能力は他の劇場を圧倒するものでした。最高・最強の映画館というのも性能的なものであって人によっては思い出の映画館を最高と捉える人もいますし、低音を増したものが最強という方もいます。もちろんそれも最高・最強の映画館であると言えます。しかしもう今はない、他の映画館とは構造の全く異なる映画館が渋谷に確かに存在していた事を知っていてもらえるとうれしいです。


次回はがらっと変えてゴマの映画館の選び方を書きたいと思います。
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