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今は無き最高上映品質の映画館・Q-AXシネマ(渋谷シアターTSUTAYA)その4 プライベートライアン爆音上映

2016年08月14日 11:04

2010年9月26日の日曜日、この日をもってTHX認証シアター1が閉館となりました。シアター2を含めた渋谷シアターTSUTAYAの閉館は9月30日となりますが、閉館上映として特別上映が行われたのは26日のみです。あまりにも急な閉館であった事もあり、優秀の美を飾る閉館上映をラインナップしたかったようですが叶わぬ事となりました。音・映写にこだわり抜いた映画館であったからこそ閉館前にその能力を発揮できる作品をたくさん見たかったですがプライベート・ライアンという大作を上映出来たというのは幸運であったと思います。

今回はプライベート・ライアン ファイナル爆音上映について書いていきます。

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1日のみの閉館イベント上映となった渋谷シアターTSUTAYA。この劇場の素晴らしさを何とかして1人でも多くの人に体験してほしいと思い、多くない友人に可能な限り声をかけました。渋谷という茨城から遠く離れた場所に来て映画を見るという敷居の高いものでしたが10人近い友人が来てくれました。昔からの友人やそこから広がった友人関係、職場の仲間、非常にうれしかったのを覚えています。翌日が仕事という事もあってみんなは14時の回を、自分はどちらも見るという暴挙(?)に出ました。

チケットカウンターはそこまでの混雑は見られませんでした。

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やはり駅からやや離れた場所であったりそもそも知らない人も多かったりしたのでしょう。通り道でも地図を片手に劇場を探す人がちらほら見られました。14時の回はほぼ満席、18時の回は空席がまばらに見られました。

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タイムテーブルにもTHXロゴを入れる徹底したこだわりが光ります。サウンドはなんとdts.。なかなか聞けない物です。今ではPCM5.1chが主流ですがDOLBY DIGITALよりも圧縮率が低く高音質である事を謳っているものでフィルムと同期して音の入ったロムを再生するものでした。なんだかんだで映画館では3、4回聞いたかどうかくらいのものですね。

爆音上映という事で音量が大きめである事の注意書きがあります。THXについての記事を見ていただいた方には分かると思いますがTHXは規定音量が決まっています。それでもなぜあえて大音量上映を行ったか。当時は吉祥寺にあったバウスシアター(閉館)が人気であり、シネマシティでも今ほどの爆音推しではなかった為非常にプレミアな上映であったマイケル・ジャクソンのTHIS IS ITが高い評価を得ているものでした。特にシネマシティのkicリアルサウンドは特殊構造・機材による強力な音響が渋谷シアターTSUTAYAと性質は違えど似ている部分もあったため閉館前に勝負を挑んだとも思えます。またプライベート・ライアンは強烈な音が収録されています。これをスピーカーの破損を覚悟で再生し、戦争の擬似体験をお客にさせる為でしょう。スピーカーユニットが破損しても次の上映がないのですから・・・


B1に降りる階段。

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チラシが全て撤去された階段はものさびしく、次がない事を嫌でも認識させられます。

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見ている人はどれだけいたか、いつのもモニターにもしっかりとプライベート・ライアンの案内が。これで本当に見収めの文字が悲しい。

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階段の先にはちょっとしたサプライズが。

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映画館マニアにはたまらないプレートやチラシが展示されています。更に驚きなのはこれ、例の映写さんの私物だそうな。DOLBYのプレートでも普通には手に入らないものですがTHXのプレートやポスターはどこから手に入れたのか・・・

せっかくなので1枚記念に。アイスエイジのキャラクター、スクラットもカメラ目線に(笑)

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自分のような映画館が好きな人間には最高の演出なのですが、一般の人には「なんだこれ?」ってものでしょう。そもそも見てもいないかもしれませんが、映画館という空間に最高の品質を求めていた人には「分かっているな」と思わせるものです。

劇場に入るとビデオプロジェクターでの映像が流れています。

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劇場からのメッセージが流れていました。自分自身この文章を見ていても閉館することがまだ信じられていませんでした。

ちょっとチャチャ入れますとあの狭い映写室に設置したビデオプロジェクターから投射している訳ですが映写位置の良さは非常に良いですね。映写さんのこだわりです。



本編前にはdtsトレーラーとTHXトレーラーが再生されましたがこちらは規定音量での再生との事です。連れの中には長いと感じた人もいるみたいですが個人的にはDOLBYも流してもらいたかったですね。長すぎるのでまあやむなしではあります。以前の記事で書いたように空間が鳴るというにふさわしい音です。THXトレーラーの中には同じものが流れますが実はSRDとSRの2種類。デジタルとアナログですが、特殊劇場設計と調整によりアナログ音声でも全く違和感がありません。サラウンドに多く音が配置されるソースであれば気づく人もいるでしょうがフロントにおいてはサブウーハーなしでも十分に聞ける音でした。こういったさりげない所にもこの劇場の底の深さが見えますね。


○2回の最終上映。その時、渋谷が戦場になる。


本編開始。冒頭の静かなシーン、墓前で回想になるまでのシーンはやや大きめという感じの音量です。しかしオマハ・ビーチのシーンになると一気に変わります。耳を刺すような波の音。上陸艇の彼方から聞こえる砲撃の音、低く唸るエンジン音。役者たちの声はシャープに中央に定位します。大音量上映、または基本的に音量を大きめに再生している劇場では高域を下げています。これは音量が大きくなるにつれて高域が聴感的に大きく聞こえてしまうので高域を下げてバランスを取っている為です。シネマシティにおいては調整ありきの運営なので正確にはこれに当てはまらないと言えますが爆音上映時にはバランスを考慮して調整されているので低音は大きく出ていても聞ける音になっている訳です。

一方渋谷シアターTSUTAYAでは適切に調整されたものを大きな音量で再生したものです。なので冒頭の波の音や機関銃の音も高域が突き刺さるような鋭さを持っています。しかし特殊劇場構造や適切な調整により高域の鋭さは多少耳障りであろうと大音量でも他の帯域を邪魔せず止まる低音や劇場空間全体に広がり、定位する音場も健在です。これだけ大音量でも人の声が膨らまないのは凄い事です。シネマシティは独自の空間により音が響き、定位が甘いという弱点があります。IMAXでは劇場構造にもよりますが声は膨らみやすく、単発のサラウンドでは綿密なサラウンド音場は生み出せません。音響調整で低音を出し迫力を増すような事はどこでも出来ますし、音量を増す事も出来ます。シネマシティも爆音が唯一であるようにこの劇場も基本性能の高さがあるからこそ音量を上げても破綻しないのです。

またプライベート・ライアンという大作が渋谷シアターTSUTAYAという劇場のクオリティに見合う作品であったという事も大きいでしょう。中途半端な作品では劇場の性能に作品が追いつけないからです。

また映写においても古いフィルムでありながら映写さんの本気がうかがえるものです。冒頭は多少スレによる傷がありましたが保管状況によるものでしょう。ブレがなく、劇場の空間とスクリーンを直接つないだような鮮明な映像。粒子感とややグレーの強い色味が戦争映画の重々しさを伝えます。トム・ハンクス演じるミラー大尉のアップでは震える瞳やまつ毛の1本1本、顔についた砂や滴り落ちる海水の一粒、実際に目の前にいるかのようなリアルさがあります。
蝋燭の火の中、教会で語り合うシーンでは劇場の暗さもあり、陰で暗くなった部分まできっちりと描写する解像感の高さが分かります。柔らかな蝋燭の火に照らされる役者たちの陰影感も描き、フィルムに焼き込まれた情報を引き出す性能の高さと調整はマスターオブモニターと呼ぶにふさわしいものでしょう。
ここにもデジタルでは見れないフィルムの深みがあります。デジタルシネマにより運営が楽になり、クオリティの高さが平均化されたのは非常に喜ばしいものですが解像度∞のフィルムの映像にはまだ及ばないというのが実際の所でしょう。

1回目は友人たちと見ましたが全員からその音の凄さを絶賛する言葉がもらえました。本物の音、という言葉や自分が映画館に対してこだわるのも頷けるという言葉も嬉しかったですね。

友人たちと別れて2回目。本当に最後となる最終上映。お客は1回目より少なかったのが残念でした。しかしプライベート・ライアンの録音を大音量で鳴らしきったスピーカー達にはよく耐えたという言葉を贈りたいです。

最後まで鳴らしきったJBL 8340A

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閉館上映は水戸テアトル西友に続き2回目でしたが上映後に拍手がありませんでした。渋谷の奥地の隠れた劇場だからか、当日が実際の最終日ではないからか、自分が率先してでも勇気を出して手をたたけばよかったと今でも悔やみます。映写さんのアナウンスで「当劇場の業務はこれにて終了となります」との言葉が。本当に終わってしまったという寂しさとプライベート・ライアンという大作を劇場の持てる力を発揮した上映で見る事が出来たという満足感が入り混じった不思議な気持ちでいました。

もうお客が座ることのない座席。お客を支えて作品と向き合ってきた功労者です。
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上映後は映画館関係で知り合えた方々や映写さんと話をしたり、一緒に写真を撮ったりしました。劇場を出た時、最後に撮ったシアター1の写真がこれです。

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誰もいない空間が寂しいですね。Q-AXシネマとしてオープンしてわずか4年程での閉館。あまりにも納得の出来ない終わりとなってしまいました。映画美学校となってTHX認証を辞めてもこの劇場自体をそのまま運用してくれれば救いではありましたが特殊吸音、反射、拡散機構も全て取り壊し、規模を大幅に縮小した劇場に造りかえられています。前にも書きましたが様々な挑戦的な取り組みから生まれた復元不能の劇場だったので二度と造る事は出来ないでしょう。もちろん映画美学校となった今は多くの学生の学び舎として活かされる事を期待します。

映画館巡りをしてきた中で最も楽しかった時期は渋谷シアターTSUTAYAに出会ったころだったでしょう。ただこの劇場がなくなって以来、それを超えるものがなくなってしまったので以前ほど楽しめなくもなってしまいました。ただ旅の中、4年程の運営の中でこの劇場で映画を見る事が出来たというのはこの先死ぬまで自分の中での最高の経験、「THE EXPERIENCE.PERFECTED.」であった事には間違いありません。

話し込んだせいで終電ギリギリになり駅まで全力疾走し、電車の遅れで危うく茨城に帰れなくなりそうだったのも今となってはいい思い出です。


帰る前に振り返ったQ-AXビル
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次回はもしQ-AXシネマ・渋谷シアターTSUTAYAが閉館していなかったら。スターウォーズやガルパンなど音響に対する認識を変えた作品を上映していたら、ここで個人的に見たかった作品は、というifの記事にて最高の映画館の記事を〆たいと思います。
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