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今は無き最高上映品質の映画館・Q-AXシネマ(渋谷シアターTSUTAYA)その3 シアター1

2016年07月18日 20:44

前回は2階にあるシアター2についての記事を書きました。小ぶりながら細かいところのこだわりが尋常でないシアターでしたが今回はそれを大きく上回る音響性能を誇った地下1階のTHX認定劇場・シアター1について紹介したいと思います。

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地下に続く映画のチラシが並ぶ通路の先にシアター1はあります。

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階段を下りた先がチケットの確認場所になっています。ここにも2階同様にモニターが設置されていますがTHXのロゴがこちらには表示されます。もともと駅から多少離れてはいるとはいえど静かで落ち着いた雰囲気は渋谷であることを忘れさせてしまうほどです。


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劇場外部の天井にも吸音材が敷き詰められています。

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劇場後方、映写室がある裏側には緩やかなカーブの通路がありトイレが設置されています。

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間接照明により独特の雰囲気です。しかしながら劇場とこの通路の間に映写室があるわけです。例の映写さんにちょっとだけ映写室を覗かせてもらいましたが信じられないほどの狭さです。2台の大きなフィルム映写機が鎮座するにはあまりに小さな空間。この空間の中でフィルムと真っ向から向き合い映写を続けてきたのには脱帽です。


シアター入口には映画館好きとしては見逃せないプレートがあります。

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THX認定の照明のプレート。なかなか見かけないDOLBY SURROUND EX、そしてここでしか見たことがない、激レアの赤とシルバーのdtsプレート。よく見るとスクリーンサイズの下にも表記はあります。この手のプレートやポスターはこだわりの強い映画館が演出や設備誇示のために貼り付けます。なのでTHXでもプレートやポスターを貼らない場所もあります。こういった物にもお金はかかりますからね。

プレート類はやり過ぎるとうっとうしくもなりますがQ-AXシネマはさりげなく、でも目につく場所にこう言った映写さんの遊び心が隠されています。通常は動線的にも階段すぐのプレートのある入口から出入りしますが、映写室への扉がある反対側の入り口にもさりげなくポスターを貼ったりしています。

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日によっては誰も通らない事もあるであろうその出入り口にひっそりとある。こういうところにも劇場に対する誇りがあります。


入口から中に入るとそこは他の映画館にはない空間がお客を待っています。
これが未だ自分が映画館巡りをした中で未だ超えるものがない最高品質の劇場です。

シアター1

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定員263席、THX認定劇場。規模はシネコンに比べると小さいですが、見た目からもその異質さが伝わるかと思います。まずシアター2と同じ共通点として映写窓が高透過ガラス1枚、マットプラススクリーン、浮き床構造による外部騒音の排除、段床の高さを変える事によって全ての座席で最適な視野角。とこれだけでも凄い事ですがシアター2を超える仕掛けがこの劇場にはあるのです。

段床の違いが分かる1枚。緻密な計算によって成り立つ劇場。

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段床の微妙な差と適切なスクリーンサイズにより最前列でも見やすく、最後列でも不足のない映像が楽しめる。

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スピーカーの間にあるのが高透過ガラスの映写窓。映写スタッフと共にTEXくん人形が場内を見守っていました。

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○特殊反射拡散吸音構造

以前イオンシネマ海老名のTHXはなぜすごいか、という記事を書きました。1993年で500席を超える規模、今でも恐ろしい性能ですが、この劇場も海老名の特殊構造を更に昇華させた構造になっています。この劇場の壁面は見た目はまっさらですが触ると硬い反射構造の部分、柔らかい吸音部分が存在します。さらに背面の吸音処理は特に柔らかな吸音材でソフトな吸音を行っています。また場所によって周波数ごとに最適な吸音を行う多層吸音材も使用されています。これらの反射、吸音部材は劇場を造る際最高の劇場をという事で各メーカーも奮起し、とてもグレードの高い、しかも現在では扱いのない夢の部材を使用しています。

さらに劇場の両壁から斜めにせり出すような柱が見えます。

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この柱の近くで手をパン!と叩くとビィィィィィン・・・という音がします。こういった余計な音は通常ノイズでしかないのですがこれは中に仕込まれた反射材によるもので単体では有害でしかない物ですが劇場内に計算して配置される事によって絶妙な音響拡散効果をもたらします。

この特殊反射拡散吸音構造によって場内に入った際の空気感は独特のサァァッとしたものになっています。吸音のみの映画館ではどうしてもズゥゥゥンとした重い空気感になりますがこの違いが音にも現れます。感覚的にはイオンシネマ海老名とシネマツーの間くらいでしょうか。


○試写室レベルの静音性

THXは空調のレベルまで管理します。規定値は空調作動時NC‐30以下以下ですがこの劇場では何とNC-20。試写室レベルの静音性を確保しています。日常では体感することがまずないほぼ完全な無音です。浮き床構造による遮音性が高い事、劇場内の特性の良さ、さらに恐るべきは空調です。天井には反射の要因にもなるので足元に吹き出し口があります。吸気は背面両壁から行っています。


暗くて分かりにくいですが足元にある吹き出し口。
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背面には吸気口がある。
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○余計なな物が一切ない天井、深い黒

通常天井には照明、空調が設置されていますが空調は足元、照明はバットレスの間に設置されています。天井には敷き詰められた吸音材以外のものがありません。

バットレスと照明、スピーカー。このサラウンドスピーカーの設置もここ独自のもの。

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天井はまっさら。映像による反射の影響を大きく抑える。
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何もない天井に黒1色の壁面、座席も黒、バットレスにより影が生まれ更に闇が深まり、消防法ギリギリまで誘導灯も暗くしてある場内はまさに映画を集中して見る為の空間になっています。


○技術者も驚くほどの音響特性の空間。

こうして出来上がった空間は調整屋さんやTHXの技術者が驚くほどの測定値を生み出したそうです。こうした劇場構築は下手なスピーカーを導入したり特殊設定や規格よりよっぽどお金がかかります。当時出来うる最高を全てつぎ込んだ結果他に類を見ない性能を持つ劇場が生まれたのです。
スピーカーについては最初の配置からTHXが配置を再指定したという話も。サラウンドスピーカーの特殊配置やサブウーハーの集中配置などの答えを出してしまうのはTHXマジックと言えます。スピーカーはJBL4632Tに4642A、8340Aと機材だけで言えばTOHOシネマズひたちなかのシアター4と完全に同じです。しかし出てくる音は到底同じスピーカーとは思えないほどのものでした。


○作品が劇場に負ける程の性能は映画館というより試写室というレベルにある。

シアター2は素晴らしい「映画館」であったと言えますがシアター1は映画館という能力のさらに上にいます。まさにTHXの理想とする試写室やダビングスタジオでの音をありのままハイクオリティに再現する能力があるからです。その為通常の映画館では機にならなくても作品の録音の悪さをありありと再現してしまうのです。この劇場の能力をありのままに活かせる作品も限られるでしょう。

シアター2でもそうですがこの映画館はサウンドトレーラーというデモンストレーションを映画本編の直前に入れてくるという非常に手間のかかる事をしています。サウンドトレーラーはデモだけありとてもいい音が収録されていますがあまりに凄すぎて本編が霞んでしまうほどです。
THXのAmazing Lifeがイオンシネマ海老名で流れ非常に好評でしたがここのAmazing Lifeの比ではありません。



木々の細やかなきらめきは全体に広がり劇場全体が音源になったよう。中域はシャープでありながら量感もあり中核をしっかりと担います。Amazing Lifeといえばキノコの低音ですがもはや衝撃波と言える程に深く重く強烈ですが止まるべき所でピタッと止まり、なおかつ他のスピーカーの音を一切邪魔しません。

DOLBYのトレーラーではraintとperspective(STOMP)が特に素晴らしかったです。



rainは音の定位が縦横無尽というのにふさわしくぶつかり合う水の飛沫が頭上から側面からあらゆる方向から包み込んできます。DOLBY ATMOSが自在な音の配置が可能と言いますが正直オブジェクトベースなど必要ないと思えるほどの表現がフィルムの5.1や6.1で表現できているのです。



perspectiveは最初の指を鳴らす時点ですでに違います。中央から空間に音が広がりゴミ箱を叩く音が弾むように続く、音が増えて行っても音はひとつひとつ鮮明なまま、音がサラウンドに移動するとrainのように広がらずピンポイントな定位として再現しています。

こういった低音は凄く出ているのにキレがある、広がりがありながらピンポイントな定位も可能といった通常では出来ないような表現がこの劇場には再現可能でした。


本編においてもシャープな中域から高域、他の帯域を邪魔しない低音、空間が音を表現するサラウンド、前後感のあるフロント表現は健在ではあります。ただやはり劇場のモニター力が高すぎるあまり声の定位が大口であるとか、音楽のレンジが狭いだとか、そもそもの音質が悪いというのがはっきり分かってしまう能力だったと言えます。

左右から十分な距離のあるスクリーン。映像の反射だけでなくメインスピーカーの反射の影響を抑える事にもなっています。スクリーン下のステージ下部は低音が抜けるようにメッシュで覆われた空洞になっている。

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○茨城から5回も足を運んだ「告白」の映写。

松たか子主演、中島 哲也監督の告白。茨城でも見た作品ですがここで見た告白の映写はゾクリとしました。影の部分までも描く階調、冷たい画質が伝わるような青の表現、シャープな輪郭のなかで1本1本流れるように見える髪の毛。こういった精彩感ある映写はデジタルには出来ないであろう映写でした。そのフィルム映写の奥深さに魅入られてしまった自分は告白を見る為だけに茨城から5回もやって来たのです。皮肉にもこの時期にはデジタル映写導入が加速じた時期です。フィルムの表現力の深さに気が付いた時には世の映画館からはフィルムがなくなろうとしていました。



写真で見ただけでは伝わらないですが、ぱっと見普通の映画館でも細かな配慮、緻密な計算、技術者たちの妥協なきこだわり、そして徹底された管理・運営がこれほどの映画館として成り立っていたわけです。ここにはシネコンの独自規格のような派手さは一切ありません。ただ最も難しい基本と理想を最大限最高のレベルで造り上げたからこその他には真似できないクオリティがあるわけです。映写さんに言われましたが劇場にカスタムスピーカーや特注モデルを入れた、強力なアンプを入れた、ATMOSやデジタル映写が完備されている。機材のスペックは高いと言えますが、
スペックの高い機材が入っているからといってクオリティが高いということではない
という事です。Q-AXのシアター1もシアター2も5.1、6.1のフィルム上映。天井にスピーカーもなければ特注のスピーカーを入れたり大型のサラウンドやサブウーハーを入れている訳ではありません。でも最高のクオリティであるのです。


日本最強レベルの映画館でしたが突然にも閉館を突き付けられます。
次回はQ-AXシネマ・渋谷シアターTSUTAYAの最終上映について書きたいと思います。
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