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今は無き最高上映品質の映画館・Q-AXシネマ(渋谷シアターTSUTAYA)その2 シアター2

2016年07月03日 22:49

前回に引き続き最高の上映環境を有した映画館、Q-AXシネマ。THX認定・シアター1と肩を並べていたシアター2.今回は2階にあったシアター2について書きたいと思います。

※シアター2は現在ユーロスペースのシアターのひとつ、ユーロライブとして運用されていますが使用機材も変更、部分改造などが施されておりQ-AXシネマ運用時の仕様とは大きく異なります。よってクオリティについても以前と同等ではないと思われる事に注意してください。

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シアター2は映画のスケジュールや個人的な時間の都合で多く利用する事が出来なかったのが悔やまれる劇場です。写真についてもデジカメを手にしたばかりで手ぶれも多く、枚数も限られています。ご了承ください。
日の当たる階段を上った先には待機スペースがあります。

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ポスターやチラシが豊富な壁面。コンクリート打ちっぱなしのシンプルな壁面を鮮やかに飾ります。

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手作り感あるフィルムをイメージしたロゴ。当初はまだ大手がデジタルを導入したばかりでフィルムが多く使用されていました。

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中央にあるモニター。

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JBLのロゴが。こういう所で使用しているスピーカーのメーカーを流しているというのはなかなかありません。設備に対するこだわりが見られます。こういったアピールはTHX認定館やシネプレックスのHDCSなどが設備に対するプライドや自信の表れとして掲げているのを稀に見かけますが、通常館でもこういったアピールがあるのはほぼ見かけません。
自分はここで映写をしていた方に色々とお話を聞く機会がありましたがこの映写さんのこだわりが尋常でなく、このモニターの映像も作ったとか。実際に映画館の運用は運用する人によって大きく変化します。こだわりがなければ映画館自体の設備がよかろうとよいクオリティの映画館にはなり得ません。


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左手の階段を上がっていくと入口が。


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こちらも音響に力を入れている映画館で見る事があります。DOLBY DIGITALのプレート。5.1chデジタルサラウンドに対応している証です。実際にはシアター2はSRD-EXとdtsにも対応していたようです。

シアター2

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恐らくこの写真をみた人がスクリーンサイズの小ささに天井の低さ、規模の小ささに驚くのではないでしょうか。座席数172席シネスコ時3.5×8.3m、ビスタ時は3.5×6.4というかなりの小ささです。しかしながらこの劇場は映写においてはシアター1にも並ぶクオリティをもち、音響性能では大手シネコンのメイン館クラスでも余裕で戦える程の能力を持っているのです。

○ハークネス社製マットプラススクリーンを採用

映画館のスクリーンはメーカーは余程の方でないと分かりません。自分も分からないです。一般的な区分けではマットスクリーンとシルバースクリーンに分かれます。シルバースクリーンは偏光方式の3Dに必要な物ですが表面が銀色なので光度が非常に高く明るいのをウリにしています。しかしながら色合いもきつく、原色・特に赤がぎらついてしまいます。マット系は大雑把に言えば標準的な白のスクリーンです。マットプラスは従来のマットスクリーンよりも広視野角、高コントラスト、明るい画像と優れた色温度を実現した高価なスクリーンです。こういった高価なスクリーンは大手シネコンでもメインスクリーンに入れるか入れないかというものです。


○映写窓のこだわり

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映写窓は誰もが見たことがあると思います。後方中央のガラスの向こうに映写機が設置されています。フィルム映写機にしてもデジタル映写機にしても稼働音は結構な音を出しています。お客との境界線を引くだけでなくノイズをシャットアウトする目的もあるんですね。しかしながらガラスがあるという事は映写を阻害する物という事です。一般では遮音性を考え映写窓に2枚のガラスを設置しています。しかし住宅の窓を見てても外を直接見ているか、窓越しで見ているかでは大きな違いが生まれます。その為、最後列ではごく多少の稼働音が聞こえながらもより鮮明な映像を映す為にガラスは1枚のみの使用となっています。多くの方は稼働音は気にならないでしょう。更にこの映写窓に恐ろしく高額な高透過ガラスを使用しています。正確な価格は分かりませんが落として割れても断面が白くならない純度の極めて高いガラスです。映写窓は設置せざるを得ないならばより透過率の高いものを、というこだわりが見られます。


○高い遮音性を実現する浮き床構造

浮き床構造とは部屋の中にもう一つ部屋があるようなイメージです。元の部屋の中に上下左右全ての間に空間を設けて中に浮いたような状態の部屋があるという感じです。実際は強固に支えられていますがこれにより空気の層が出来、外部の音を強力に遮断します。一部の劇場のメイン館のみに採用されたり、シネマシティのシネマツーでも採用されています。この浮き床構造にすると元のスペースを大幅に縮小してしまうため、スクリーンも小さくなりますし、座席数も減らさざるを得ません。それでも音の良さの追求の為に規模を縮小してまで浮き床構造としています。出入り口ドアからの風切り音が聞こえるのが難点と言えますがほとんどの人がまず気が付かないでしょうし、浮き床による遮音構造で独特の凛とした空気感があります。


○反射物の目立たない天井

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空調はスクリーン左右から吸気、天井から送風していますが、天井に○型の吹き出し口があるのではなく、溝の部分にスリット上の吹き出し口があります。照明もこの溝に取り付けられている為天井による光の反射が少なく、映像の品位が保たれます。左右の壁から十分な距離があるのでそちらの光の反射も少ない事に合わせ、スピーカーの初期反射音による音質の劣化の影響も小さくなっています。


○座席の段差が場所によって違う


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映写機は水平に投射するのが最も良いですが、映写機を水平設置した劇場はスクリーン位置がひどい高さになります。そのため若干下向きに角度をつけて映像は投射されます。その為多少なりとも映像に歪みが生じます。これは大型のスクリーンや傾斜の急な構造の劇場、カーブドスクリーンの方が顕著に現れます。シアター2では段床の高さを絶妙に変える事で投射範囲が被らないように設計されています。映写室前にある通路も投射範囲に被らないように一段掘り下げてあります。通常の映画館では行わない徹底した品質へのこだわりですね。


○絶妙な調整の音

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スクリーン上下端までは約2.5mです。非常に小さなサイズですがこのスクリーン裏に設置されているのはJBLの3632というスピーカーで高さが約2mになります。座席規模からしては適正のスピーカーとなりますが、スクリーンサイズから見るとスピーカーの範囲が大きくなる分音像が大口になりやすいのですが設置と調整を絶妙に行っている事で非常に音像がシャープで輪郭がきちんとしています。音像に関しては作品に左右される部分もありますがお金をかけたシネコンの中にもぼやけた音像の劇場が多くあります。そういう意味でもこういうきちんとした再生がいかに難しいかという事がわかりますね。サラウンドスピーカーへの繋がりも自然、下手に重低音も出し過ぎずきちんと鳴らす、3wayスピーカーとは思えないほどのまとまりのある伸びやかな音、同じ機材を使用している映画館と比較すると本当に同じ機材を使っているのか!?と思うほどの差がはっきり分かるでしょう。


○フィルムの深淵を覗く、映写技師による細かな調整

温度、湿度、巻き具合などによっても影響を受けるので扱いが非常に難しいものです。フィルムは使用する毎にすれて細かい傷が入りやすいという問題もありました。デジタル映写になってからはデジタルデータを入力しての上映なので一度適切に設置された映写機ならばセットするだけで上映が可能で一部の劇場では映写室が無人というところもあります。多少の差はありますがこれにより映写品質の平均値は大幅に上昇しました。それだけフィルム映写は難しかったということです。
現在は2Kが主流、一部上位館が4K、将来的には8Kという解像度の細かさで画質の優劣を決めています。しかしながらとある小さなスクリーンの劇場は4K映写機、もう片方は2Kでスクリーンが大型の劇場では2Kの方が画質がいいという声が多く見られます。解像度がネイティブかどうかにもよりますが特大スクリーンでも2Kで十分と言えるのかもしれません。しかし解像度が上がってもデジタル映写独特のベタッとした画は液晶テレビを見ているような気分になります。
ではフィルムの解像度はいくつになるのか。8Kなど足元に及びません。解像度は∞です。もちろん撮影のレンズや上映の環境によってその品質は大きく揺らいでしまいます。デジタル制作のアニメなどはデジタルのままの方がいいかもしれません。しかしながら0と1の符号に置き換えられたデータと一瞬一瞬をにありのままに焼き付けたフィルムではそもそもの情報量が根底から違うのです。
このQ-AXシネマでは計算されつくした空間、映写と音響にこだわった施工に加えて映写さんの事細かな調整によりフィルムの奥深さが色濃く出ています。役者の輪郭のシャープさ、髪の毛1本1本のきめ細やかさ、真っ黒な影の部分にすらきちんと画が映っていたという事に気が付ける凄さを感じる事が出来ました。


○赤い椅子が特徴的なシアター2はまさに上質の「映画館」

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シアター2は規模が小さいながらも様々なこだわりが見え隠れするとてもお金も手間もかかっている劇場です。Q-AXビル内だけの話ではなく、相手がシネコンであろうとこれだけの施工はなかなか出来ないものです。他にも様々なクオリティを実現するための秘密があるのだと思いますが今となっては過去の話になってしまいました。映写、音響のクオリティも非常に高く特殊なスピーカーや規格を持った映画館にも対等以上に戦えるほどの実力を持っています。スクリーンサイズに関してはIMAXのように大きければ大きいほどよいという人には物足りなく思うかもしれませんが、大きくなるほど弊害も出てきます。大きければいいというものでもないのです。

シアター2はこれほどにも素晴らしい「映画館」であったわけです。そうなるとTHX認定のシアター1はどんな劇場だったのか。シアター1のクオリティはもはや「映画館」ではなかったのです。これだけの実力を持ったシアター2でも霞んで見えてしまうほどの強烈すぎる劇場です。

次回はQ-AXシネマのTHX認定劇場、最強の能力を誇るシアター1について書いていきます。
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